中学校1年生に薦めたい本100冊vol.12 3月

はじめまして、文学。~日本の文学初歩の初歩

ラノベから読書に入るのも
仕方ないと思います。
でも、ラノベに浸っている子どもは
いつか本から離れ、
刺激のあるメディアへと移行します。
ラノベは本好きを
育ててはいないように思います。
できればこうした文学作品に
少しずつ接近して欲しいと思うのです。
そういう読書のための
道筋をつくりたいと考えています。

中学校1年生の読書の
到達点として設定したい、
日本文学名作8冊です。

その1
「ブンとフン」(井上ひさし)

売れない作家・フン先生のもとに
現れた男はなんと、
著作の小説「ブン」から抜け出した
怪盗ブン。
ブンは時間をこえ、
空間をこえ、神出鬼没、
やること奇抜、なすこと抜群、
不可能はなくすべてが可能、
どんな願いもかなう大泥棒…。

その2
「ぼくがぼくであること」(山中恒)

五人兄弟の四番目・秀一は
兄弟の中で唯一勉強が苦手。
いつも母親から説教されている。
ある日、売り言葉に買い言葉で、
秀一はついに家出を決行する。
近くに泊まっていた
トラックの荷台に潜り込み、
彼は知らない町へと運ばれる…。

その3
「戦争童話集」(野坂昭如)

自分の死期を悟り、
群れから離れた雌狼は、
女の子・キクちゃんと出会う。
キクちゃんは
麻疹にかかったため、
満州を脱出する日本人の一団から
捨てられた子どもだった。
キクちゃんは雌狼を、
自分の飼っていた
犬・ベルだと思い込む…。

その4
「ぼくのおじさん」(北杜夫)

小学校6年生の「ぼく」の家には
居候の「おじさん」がいる。
一応、大学の講師だが
ぐうたらでだらしがない。
その「おじさん」について
「ぼく」が書いた作文が、
ハワイ旅行に当選する。
「おじさん」は厚かましくも
保護者として同伴するが…。

その5
「つぶやき岩の秘密」(新田次郎)

両親を海難事故で亡くした
六年生の紫郎は、
岩場に耳をあて、
母の声に似た海のつぶやきを
聞くのが好きだった。
ある日、彼は崖沿いに
幽霊のような人影をみる。
その崖には、
旧海軍の残した金塊が
隠されているという
噂があった…。

その6
「ビルマの竪琴」(竹山道雄)

ビルマ戦線で英軍捕虜となった
日本軍兵士たち。五日後の
帰国を告げられた彼等には、
解放される喜びとともに
ただ一つの気がかりがあった。
それはこの収容所に
送られる前に、他の部隊の
降伏を説得しにいった
水島上等兵の行方…。

その7
「二十四の瞳」(壺井栄)

島の岬の分教場に
赴任した大石先生。
1年生十二人は
彼女にすぐになつき、
楽しい日々を送る。
本校勤務となった4年後、
5年生に進級した子どもたちを、
彼女は再び受け持つ。
しかし、時代は人々の暮らしに
暗い影を落とし始める…。

その8:
「君たちはどう生きるか」
(吉野源三郎)

旧制中学二年のコペル君こと
本田潤一は
学業優秀で人望もある。
父親を早く亡くしたため、
無職でインテリの叔父さんが
コペル君の相談に乗っている。
叔父さんは自分の考えを
コペル君に伝えるため、
「ノートブック」に書き記す…。

子どもも大人も楽しめる8冊を
取り上げたつもりです。
そして、年齢を重ねてから再読すると
なおその良さが理解できる8冊です。
図書館で借りるといわず、
身銭を切って本を買い、
自分の部屋の書棚に並べて欲しいと
願っています。
それがいつかきっと
財産となるはずですから。

※先日、海外の名作8冊を
 取り上げた際、
 海外には子どものために書かれた
 文学作品が多いことを書きました。
 日本文学には意外に少ないのです。
 原因の一つは、日本の文豪たちが、
 青少年の読者を
 あまり意識していなかったと
 考えられることです。
 もう一つは
 早い段階で「赤い鳥」などの
 児童文芸誌が創刊され、
 純文学作家と児童文学作家の
 棲み分けができてしまったのでは
 ないかということです。

※こうして1年生に薦めたい
 8冊を並べてみても、
 山中恒、壺井栄はどちらかというと
 児童文学専門。
 竹山道雄と吉野源三郎は
 この一作品のみ。
 ここで取り上げた8冊の中で
 純文学作家が
 子どもに向けて書いたのは
 井上ひさし・北杜夫・新田次郎・
 野坂昭如の4作品です。
 野坂昭如はかなり異質ですが。

(2020.12.6)

Mystic Art DesignによるPixabayからの画像

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